「言語弱者」と「生き抜く力」

 私が勤めている大学は、なにかの方針があるからなのか、学内の案内表示や掲示物が非常に少ない。そして、日本語以外の言語による表示がほとんどない。学内の食堂も同じで、入り口のディスプレーに商品見本は置かれているものの、商品名、定食の中身などは全て日本語で書かれている。

 最近は、公共の施設では、「言語弱者」への対応が(まだまだ不十分ではあるが)行われるようになっている。例えば電車の路線図などでも、英語表記、アルファベット表記、路線ごとに色を変える・アルファベットで記号をつける、駅の表示を路線を示すアルファベットと数字の組み合わせにするといったがそうである。

 10数年前、韓国・ソウルに出張に行って地下鉄に乗った際に、路線図を見ながら「韓国語ができなくてもソウルの地下鉄には簡単にのれますよ。ほら、これが路線の記号で、駅の数字と組み合わせになっていて…。そして、乗換駅では特別な音楽がなるんですよ。」と一緒にいった韓国人の先生に教えてもらい、いたく感動したことを思い出す。

 さて、今日、食堂で注文の列に並んでいると、店の人にスマホを見せている学生さんを見かけた。店の人は最初怪訝な顔をしていたが、「ああ~」といって、お皿に豚カツをのせ始めた。その学生さんがスマホをしまうときに見えた画面には、食堂の入り口にある商品見本の豚カツの写真が写っていた。

 「この方法は海外に行ったときに使える!!」「この学生さん(おそらく2週間程度の特別プログラムできている海外の学生さん)、毎回このストラテジーで注文しているのかなあ?」「もうちょっと、表記や表示方法を工夫したらいいのに…」といういろいろな思いが交錯した。